試験会場は、海の向こうです ── 人口1,016人の島の求人票を読む
宮古空港を飛び立って、数分。
窓の下で、宮古島の海岸線がゆっくり遠ざかっていく。プロペラが回っている。39席の小さな飛行機だ。この便は1日2往復。船なら約2時間、日曜は運休。
この先にある島に行く手段は、それだけです。
その島に、いま、役場の求人が出ています。そして、試験会場も、その島にあります。
まず、日程
多良間村が「令和8年度 多良間村職員採用候補者選定試験」の実施要領を公表しました。
- 申込受付:令和8年7月1日(水)〜7月29日(水)必着
- 第一次試験:令和8年8月9日(日)13時00分〜15時30分
- 試験会場:多良間村役場 2階会議室
- 第二次試験:第一次合格者に通知(作文・口述試験)
締切まで、あと少しです。
そして会場の欄を、もう一度見てください。多良間村役場、2階会議室。
受けるには、島に来るしかありません。1日2往復のプロペラ機か、週6日の船で。
募集は3職種
| 試験区分 | 採用予定数 | 職務内容 |
|---|---|---|
| 行政職 | 若干名 | 行政事務全般 |
| 保育士職 | 1名 | 幼稚園教育業務、保育業務 |
| 消防事務職 | 1名 | 消防事務 |
多良間村の人口は 1,016人、世帯数は 549世帯(令和8年5月末現在)。
549軒。それがこの島の、家の数です。
その島の求人が、この3つ。数字で見ると、行政職が若干名、保育士が1人、消防事務が1人。それだけです。
でも、この3行を、ただの職種名として読まないでほしいのです。
保育士を1人募集しているということは、この島に子どもがいて、預かる場所があるということ。
消防事務が1人いるということは、1,016人の島にも、消防があるということ。
求人票は、その土地に「何が必要とされているか」の一覧表でもあります。3行しかない。逆に言えば、この3行で島の生活の骨格ができている、ということでもあります。
ちなみに消防事務職には、大型自動車運転免許(または令和9年3月31日までに取得見込み)が必要です。消防車を運転する人が要る。当たり前のことですが、島の求人票では、それが1行の資格要件として立ち上がってきます。
受験資格には生年月日による年齢の要件もあります。詳細は必ず要領でご確認ください。

要領に書いてある、正直な一文
実施要領の「その他」の項に、こういう一文があります。
島外の方で採用となった場合における住宅は本人対応となります。
住まいは、自分で探してください、ということです。
ここは、正直に補足しておきます。この島には、民間の賃貸アパートがほとんどありません。 都市のように、不動産屋のサイトを開いて空き物件を比べる、ということができない。住む場所の確保は、島に来ることを考えるうえで、いちばん最初に立ちはだかる問題です。
僕自身は、島に戻ると決める前に住む場所のあてがあったので、そこは正直、楽なほうでした。もし何もない状態から探すとなったら、まったく違う話になっていたと思います。
村は定住促進のための住宅制度を持っていて、募集があるときは公式サイトのお知らせに出ます。応募を考えるなら、求人票と一緒に、そちらも見ておいたほうがいい。
勤務時間は原則、午前8時30分から午後5時15分。月曜から金曜の週休2日制(保育所勤務など、勤務体制が異なる場合あり)。採用後6か月は条件付採用です。

そして、台風の項がある
実施要領の最後のほうに、こういう見出しがあります。
《暴風雨時・自然災害発生時の対応》
試験当日に暴風警報が出た場合、地震などが起きた場合は、実施について後日連絡する。台風の状況によっては、交通の事情から事前に延期を判断することもある。
──採用試験の要領に、台風で延期になりうると、最初から書いてある。
これが、この島で働くということの、いちばん短い説明かもしれません。飛行機は飛ばない日がある。船は止まる日がある。だから予定は、いつも「たぶん」がついてまわる。
それでも、試験は8月9日、多良間村役場の2階会議室で行われます。
「来てみないと分からない島だから、それでいい」
試験を受けるためだけに、飛行機か船に乗って海を渡る。ハードルが高いと思う人もいると思います。
でも僕は、それでいいと思っています。
この島は、来てみないと分からない島です。写真では分からない。ネットの情報でも分からない。船の欠航も、店の少なさも、空の広さも、実際に立ってみないと分からない。だったら、受ける前に一度、この島に降り立ってもらったほうがいい。試験会場が島にあるというのは、そういうことだと思っています。
実際、島の外から来て、ここで働いている人もいます。
人口1,016人の島の求人は、たしかに多くありません。過疎化が進む島だから、こんなものだとも思います。ただ、人が少ないということは、一人が動かせる範囲が広いということでもある。やる気とアイデアさえあれば、この島では、意外といろんなことができます。
応募を考えている方へ
- 申込先:多良間村役場 総務財政課 人事・給与係
- 申込用紙:役場窓口、または村の公式ホームページからダウンロード
- 提出:持参または郵送(郵送は封筒に「受験申込」と朱書き、簡易書留)
- 締切:令和8年7月29日(水)必着
※締切後は、いかなる理由があっても受付されません。詳細・受験資格・様式は、必ず村の公式ページと試験実施要領の原本でご確認ください。この記事は公表された要領にもとづく紹介です。
▶ 多良間村公式ホームページ
https://www.vill.tarama.okinawa.jp/
宮古から、プロペラ機で20分。船で2時間。
試験会場は、その先にあります。